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声が気になる…

正月明けたと思ったら、もう1月の半ばですね…早い。
本家HPの更新もボチボチ、人形制作もボチボチ、原稿執筆もボチボチ…そんな感じで正月ムードもも落ち着きはじめた先日、久々に映画「鉄キン筋クリート(監督マイケル・アリアス)」を見てきました。
いちばん多感なお年頃(?)の10代後半に夢中になって読んだ松本大洋の漫画が原作のアニメーション映画です。

物語はー宝町という古い繁華街を根城に野良猫のように自由に飛び回り気高く生きる孤児のシロとクロという二人の少年がヤクザや警察と渡り合いながら都市開発に揉まれ自我との戦いのうちに成長していくというもの。
松本大洋の漫画は数年前にベランダダイビング窪塚(苦笑)が主演で実写化され話題になった「ピンポン」と同様、陰と陽、相反する性質を持った主人公の二人の少年の恋愛にも似た友情以上の絆がなんとも不思議な魅力で、どちらが欠けても成立しないような「まるいおせんべい」のような絆に憧れ恋に恋するお年頃には恋愛教本のように読んでおりました(ポッ)。
さらに、当時としてはかなり斬新で洗練された描線を持った漫画(後々影響されたであろう漫画家がゴロゴロ出てきた…)で、魚眼レンズで覗き込んだような独特なゆるい曲線で詳細に描き込まれた、大阪か浅草か…どこかであってどこでもない懐かしいのに近未来のような町並みや、ファッションセンス、主人公達の独自の言葉遣いなど強烈な魅力に溢れていて何度も何度も読み返したほど熱中したものです…
そんな青い頃の思い入れがいろいろありまして、アニメーション化には複雑な思いがありました。

で、本編。
全体的には監督の原作に対する愛が随所に見られ好感が持てました。
テクノちっくな音楽にのせて、緻密に描き込まれた、それでいてペーパークラフトを組み合わせたように薄っぺらい町並みを疾走していく映像に乗り物酔いのような感覚にくらくらしながら、「そうか、東京の町並みって張りぼてのように裏側がお粗末で、吹けば飛ぶような看板だらけのゴタゴタガサガサした町並みだよなぁ〜」と感心してみたり、「あ、これは下北だな」とか「浅草だぁ〜」とか「心斎橋のあの辺だね」とか発見の喜びがあったり、街の映像化だけにもかなりの手間と愛情が感じられます。都市開発による街の変貌と哀愁。路地萌えです。
しかしながら、シロとクロの街を疾走する軽やかさが若干足りないというか…アニメキャラ化された絵が、異様に足が小さくてパタパタした動きで、なんか…「クレヨンしんちゃん」みたいなのよね…(↑見終わった後の第一声が旦那も同じだった↓)。
さらに声、これが賛否両論だとは思うけど、私はあまり好ましくなかった…なんで無名でもリアルな年頃の少年の声にしなかったのかなぁ…と悔やまれるばかり。
最近こぞって俳優を起用しますが、あれ、好きじゃないんですよね。声で顔が見えるから。
特にシロの声が…蒼井優が嫌いなわけではなく、ただ、演技派女優といわれるヒトの演じる「白痴声」が苦手なので、間延びしたバカっぽい喋り方が、「クレヨンしんちゃん」(もしくは←のモノマネを嬉しそうに披露するグラビアアイドル)を連想させるというか…少年じゃないのよね。
子供ってもっと、こう声の張り方が不安定で一生懸命に喋るというか、素っ頓狂に甲高い声で笑うと思うのよね。
ま、所ジョージ吹き替えのアレフ(←NHK海外ドラマ)や、なべおさみの吹き替えたスヌーピー(←これもNHKでかつて放映されていた)のチャーリーブラウンより100倍マシな気がしますが。
あと、色のトーンも全体的に優しすぎたかな(今のアニメの流行なのか?)

アニメ化に10年もかっかった大作だけに「商業的においしいからアニメ化、ドラマ化しよう!」という安易さが無く、「好きだから試行錯誤で映像化してみました」という感じで良かったと思うのでした。
しかしながら漫画でも小説でもアニメ化・ドラマ化自体が最終目標ではなくて、オリジナル作品を読んで想像世界を広げるという素晴らしさがもっと浸透すれば良いのにね…とも思いますね。原作って言葉が良くない、別物なんですものね。別物と考えれば楽しい秀作でしたよ。
by tosakanekosha | 2007-01-13 19:40 | 映画・テレビ・ゲーム